結婚してみませんか？
俺は少し考え込み、前から気になっていたあの事を詩織さんに聞いてみる。

「あのさ、恋ちゃんって中学生の頃…イケメンの彼氏とかいたかな？」

詩織さんは唐突な質問にキョトンとした表情になった。

「中学の頃…ですか？いえ、私は恋ちゃんに彼氏がいるって話は聞いた事ないですけど、イケメン…それってもしかして悠人の事ですか？」

「悠人…詩織さんは笹倉悠人を知ってるの？」

思わず前のめりになって詩織さんの話を聞く。

「私は直接悠人に会った事はないですけど、悠人の事は知ってますよ。ファンでしたから。」

「悠人…ファン？」

どういう事だ？話がさっぱり分からない。

「はい。モデルの笹倉悠人ですよね？」

「モデル…。ねぇ、笹倉悠人の事詳しく聞いて良い？」

「はい。えっとSEEDって雑誌分かりますよね？中高生に人気のあるファッション誌なんですけど。」

SEED…うちの出版社の雑誌だ。もちろん俺も知っている。

「うん、知ってる。」

「悠人はその雑誌の専属モデルをしてて、その頃の悠人は高校生でした。そして、彼は恋ちゃんのイジメの原因でもあります。」

笹倉さんが原因でイジメにあった？

「どういう事？」

「中学生の頃の恋ちゃんもSEEDの専属モデルだったんですよ。人気もあって、雑誌の表紙を飾ったりしてました。」

恋ちゃんがモデル…確かに写真を見ても可愛かったし存在感が凄くて惹かれるものがあった。

「そのうち悠人と一緒に仕事する事が増えて、2人があまりにお似合いだから付き合ってるんじゃない？みたいな噂が出始めたんです。」

詩織さんはコーヒーを一口飲み、話を続ける。

「うちの中学にも悠人ファンはたくさんいましたから、悠人と噂になった恋ちゃんに嫉妬する人もいて、それから恋ちゃんは熱狂的な悠人ファンからイジメにあうようになりました。」

恋ちゃんにそんな過去があったなんて…。
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