結婚してみませんか?
「今のってまさか…悠人!?」

2人が居なくなった後、驚いた表情の詩織さんが俺の顔を見て言う。

「…そうだよ。」

「恋ちゃんと悠人、今でも繋がってたんだ…じゃあなくて、何か私達勘違いされてませんか?密会って…。」

「…かもね。」

「追いかけて誤解を解かなくていいんですか?」

「…いいよ。詩織さんは何も気にしないでね。」

オロオロしている詩織さんに俺は精一杯の作り笑顔で言った。

それから詩織さんと別れて1人になると、じわじわと怒り苛立ちが込み上げてくる。

この状態のまま家に帰って恋ちゃんに会ったら、俺は恋ちゃんに何を言うか分からない。

そう思ってこの日は家に帰らなかった。

次の日、出社して仕事に取り掛かるが完全に絶不調だ。

「この資料戻してきます。」

資料室という名の倉庫へ使った資料を戻しに行く。そしてふと思い出した。

「恋ちゃんのモデル時代の雑誌、この辺かな。」

気になって過去のバックナンバーから恋ちゃんが載ってる雑誌を探した。

「…あった。本当にモデルやってたんだ。」

雑誌をパラパラとめくっていくと、恋ちゃんと笹倉さんが一緒に載っているページが目にとまる。俺は思わずチッと舌打ちをした。

「人の顔見て舌打ちなんて穏やかではないですね。」

俺のすぐ後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。ビックリして慌てて振り返ると、笹倉さんが立っていた。

「…何か用ですか?」

「俺も随分嫌われたものだ。その頃の恋ちゃん、笑顔が溢れてるよね。」

開いているページを見ながら笹倉さんは話す。それが何だかムカついて雑誌を勢いよく閉じた。そして、笹倉さんの方を向き胸ぐらを掴んだ。



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