結婚してみませんか?
「…ん…ここは?」

何だか(まぶた)が重い。ボーっとしながら目を開けると、見覚えのない場所にいた。

「目が覚めたかな。気分はどう?」

声のする方に顔を向けると、そこには笹倉さんと…その後ろには智章さんがいる。

「智章さん!?」

一瞬、自分の目を疑ったが確かに智章さんがいる。私は思わずガバッと起き上がり智章さんを見た。

「恋ちゃん、そんなに勢いよく起きたらダメだよ。ほら横になって。」

笹倉さんに注意され私はまたベッドに転がる。よく見ると、腕には点滴の針が刺さっている。

「ここ…病院?」

「うん。恋ちゃん、会社で倒れたんだよ。それで病院に運ばれて今点滴中。」

笹倉さんが現状を教えてくれた。

「でも、何で2人がここに?」

「恋ちゃんの友人が相沢君に連絡してくれてね。編集長は今いないし、代わりに様子を見に来たんだ。」

友人、詩織かな。私は智章さんをチラッと見る。

「…詩織さんが連絡してくれたんだ。凄く心配してたよ。」

智章さんは私と視線を合わせずに言う。

「じゃあ俺は編集長に連絡してくるから。」

椅子に座っていた笹倉さんは携帯を手に持ち立ち上がった。そのまま病室を出ようと智章さんの横を通った時、何故か笹倉さんは足を止めた。

「…その前に独り言を言わせてもらおうかな。俺には想い人がいる。長年の片想いだけどね。そしてその相手は、恋ちゃんではない。」

そう言うと笹倉さんは病室を出て行った。独り言と言っていたけど、明らかに智章さんに向けて言っているように聞こえた。

でも何でわざわざ笹倉さんは今その話をしたのだろう?

まさか…。
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