結婚してみませんか?
「恋ちゃんって、ニックネーム?本名?」

「さぁ、どっちでしょうね。」

「フルネーム教えてよ。」

「どうせ、この先あなたと会う予定はありませんから、名前なんて知らなくてもいいでしょう?」

「あはは、そうだね。恋ちゃんって面白いな。」

そう言うと、彼は笑いながら立ち上がった。面白いって…私が?彼が何故そう思うのかが分からず、キョトンとした表情になる。

「じゃあ帰るよ。…何かの縁でまた会う事があったら、その時は名前教えてね。」

愛想笑いも出来ない無愛想な私。彼も名乗る事なく笑顔で私に手を振って、そのまま帰っていった。

彼が帰った後、私は緊張していたのか、フゥッと肩の力が抜けた。

それにしても、彼は何故詩織をお持ち帰りしなかったのだろう。男心はよく分からないけど、詩織みたいに可愛い子が酔い潰れていたら、チャンスと言わんばかりに連れて行きたくなるのではないか?

まぁ、あれだけのイケメンなら彼女の1人や2人いるだろうからそんな事する必要ないのかな。でも彼女がいるならまず合コンに来ないか。

…と、ベッドでスヤスヤ寝ている詩織を見ながら、どうでも良い事を考えていた。


翌朝 ーー

ベッドは詩織が占領しているので、私は狭いソファーで寝た。おかげで体中がバキバキする。立ち上がって体を動かし筋肉をほぐした。

「…あれ?ここどこ?…あっ恋ちゃん。」

ストレッチをしていると、ベッドから寝惚けた感じの詩織の声が聞こえてくる。

「やっと起きた。」

「ここ恋ちゃんの家?合コンは?」

寝起きでまだ状況が飲み込めない詩織。取り敢えず、起きて顔を洗い、目を覚ますように促した。

「もう朝なんだ。ねぇ恋ちゃん、何で私ここにいるの?」

「詩織、合コンの途中で私に電話かけたでしょ?それで折り返し電話したら、詩織が寝ちゃったからって酔い潰れたアンタをここに連れて来てくれた人がいるの。感謝しなさいよ。変な男に持ち帰りされずにすんだんだから。」

「えへへ、そっかぁ…もしかしてここまで連れて来たのって相沢さん?」

「相沢?」

「そう、恋ちゃんと同じ苗字なの。茶髪のサラサラ髪で好青年っぽいイケメン。なんか恋ちゃんと同じ名前だから親近感が出て気が緩んじゃったかな。」

詩織は可愛らしい笑顔で話す。茶髪のイケメン…詩織を連れて来てくれた彼と同じ特徴。…同じ苗字なんだ。

「まぁとにかく、今回は何事もなかったから良かったけど、これからは気をつけなさいよ。」

「はぁい。」

全く、この子は本当に反省しているのかな。能天気に返事する詩織を見てそう思った。

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