結婚してみませんか?
「恋ちゃん、目が覚めた?」

私はボーっとしながら目を覚ます。

「智章さん、居てくれたんだ。」

「約束しただろ?」

智章さんは笑顔で私を見る。

「あら、顔色も良くなりましたね。ゆっくり寝て回復したのかしら。」

気がつくと点滴の針が外され、看護師さんが片付けをしながら話しかけてきた。

「はい。体が軽くなりました。」

「点滴も終わったし、今日は帰って大丈夫ですよ。後は家でゆっくり静養して下さい。」

「ありがとうございました。」

私は智章さんに支えられながら病院を後にした。

「そういえば笹倉さんは?」

「恋ちゃんが寝てる間に会社に戻ったよ。」

話をしながら病院前に止まっているタクシーの前に行く。

「じゃあ後はタクシーで帰ります。今日はありがとうございました。」

智章さんが持ってくれていた私の荷物を受け取ろうと手を出す。すると、智章さんは荷物を渡さず私の手を握り、そのまま2人でタクシーに乗った。

「智章さん?」

何が起きたているか分からないまま、気がつくと私は智章さんのマンションの前にいた。

「帰ろう。」

「でも…。」

「恋ちゃんの家はここでしょ?」

笑顔で差し出された智章さんの手を、私は笑顔で握り返した。

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