結婚してみませんか?
それからしばらくして、私達は籍を入れた。

同じ苗字だから籍を入れた実感はあまりないけど、私は幸せいっぱいだ。


そして今日はチャペルウェディングが行われる。主役はもちろん、私と智章さんだ。

しっかりとプロにメイクしてもらった私は純白のドレスに身を(まと)い、控え室でその時を待った。

コンコン ーー

「はい。」

ドアをノックする音が聞こえたので私は返事した。入ってきたのは白のタキシードを着た智章さんだ。

「恋ちゃん、凄く綺麗だよ。」

「ありがとうございます。あれ、カメラ?」

智章さんの手には愛用しているカメラがある。

「あぁコレ?何か落ち着かなくてさ、式場周辺の写真を撮ってきた。」

笑いながら智章さんは話す。なんか智章さんらしいな。私の緊張も少しほぐれる。

「あの、智章さんにお願いがあるんですけど。」

「何?」

「私をそのカメラで撮ってもらえませんか?一度、智章さんの写真のモデルになってみたくて。」

私のお願いに一瞬驚いた表情をするが、すぐにカメラマンの顔になりニッと笑みを浮かべた。

「もちろん。こっちからお願いしたいくらいだよ。」

そう言って私に向けてカメラを向ける。そのカメラに向かって、私は幸せ全開の表情を見せた。

「流石恋ちゃん。モデルのセンスあるね。」

カシャ…

写真を撮り終えた智章さんはカメラを下ろし、良い顔をしている。

「やっべえ…凄く良い写真が撮れた。」

「本当ですか?ありがとうございます。」

コンコン ーー

ちょうど撮影が終わるとまたドアをノックする音が聞こえる。

「はい。」

私が返事すると、部屋の中に入ってきたのは母と笹倉さんだった。



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