揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
そうか、昔はヘアメイクアーティストだったって言ってたよね。
スタイリストさんとも精通してるしトレンドもいち早く取り入れてる。
モテる女は余念がない。
クスクス笑われる。
「さっきからチラチラ見てるけど本当どうしたの?何かあった?」
「いえ……すみません、つい見惚れちゃって…」
ゲッ…!
どさくさに紛れて何言ってんのよ!
アハハ…!ってまた笑われてるし。
「それはどうも」と微笑むとか更にヤバいです……
私、やっぱり変です。
あの日から……頭の中レイさんでいっぱい。
モヤモヤを抱えたまま自宅に着いちゃって。
また手が伸びてきて頭を撫でられる。
「ゆっくり休んでね?お疲れさま」
胸の奥がチクチク痛む。
思わず俯いてしまったら「どうした?」って顔を覗かれるのが想像出来たから。
でもしなやかな指が頬に触れるのは想定外だったから一気に体温が上昇した。
「やっぱり熱あるんじゃ…?部屋まで送るよ」とシートベルトを外した。
そんなの申し訳なくて慌てて断る。
「本当、大丈夫ですから…!送っていただいてありがとうございました!」
頭を下げて外に出た。
車が出るまでお見送りしようと振り返ったらレイさんも外に出て来て目の前に……
「何か隠してるでしょ?」
完全に疑いの目。
そりゃ隠しますよ…!
こんな乱れた気持ち、認めたくない…!
真っすぐな瞳に耐えきれず視線を逸らす。
「もしかして………」
「え…?」