揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
ヤバ……迷惑だよな。
本当に来ちゃうなんてきっとドン引きされてる。
そんな彼女は目も合わせないまま「来て」と俺の手を取った。
手首を掴まれたまま歩き出す。
華奢な腕に引かれ着いたのは彼女の楽屋…!?
そのまま中に入れてくれた。
電気を付けた後振り返った顔は少し呆れてる。
「あのね、キミすぐバレるから…っ」
そんな顔されても無理。
手が伸びて抱きしめる。
余裕なくてごめん……
「撮影の日からあなたが離れない……頭の中あなたで一杯で、胸が苦しい…」
俯く顔に彼女の手が触れる。
「こんなんじゃ仕事も手につかない…っ」
まるで聞き分けのない子供のようで格好悪い俺に顔が近付いてきて……唇が触れた。
「昨日のお返し」
こんなことってある!?
めちゃくちゃ可愛いんだけど。
今……そっちからキス、してくれたんだよね…?
お返しとか……ヤバ過ぎる。
「もう一回いいですか?」っておかわりしちゃう俺はもう手遅れですか…?
「ダメ。したら……本気になっちゃうでしょ?キミは俳優なんだよ?これくらいで揺れちゃダメだよ」
え………なに?この敗北感。
完全に「待て」をされた子犬だ。
キスされても揺れるなだって?
「もうとっくに本気だよ…」
「うん……だよね」
ハハハと力なく笑う。
本気になっちゃダメですか…?
俳優だからとか、それ理由になんかならないから。
もう止められないから。
再び手を握る。
「好きになったら迷惑……ですか?」