揺れる被写体〜もっと強く愛して〜




(言う通りに動いてねー)




えっ……!?
ドキドキ…!!
何のミッション!?
隣で誰かに電話をかけてる。
ソワソワ落ち着かない俺は密かに待機中。




「あ、千ちゃーん、今から迎えに来れる?うん、場所はメールする」




せんちゃん……?
一体誰だ!?
迎えに来るって?
チラッとこっちを見てニヤリと笑う。
え……?なんだろう……??




カバンからポーチを出してヘアバンドで前髪を上げられた。




「え?なに!?」




「万が一の為の変装だから」




「へ、変装!?」




突然メイクしだす彼女に気付いたアシスタントさんたちも面白がって「手伝いまーす」と囲まれた。
おい、ゲラゲラ笑ってんじゃねぇぞユウスケ。




あっという間に仕上がった顔は引きつっている。
目……目が重い。
睫毛カールされるしマスカラは違和感でしかない。
が、しかし。
鏡を見ると案外イケてるな、俺。




ウィッグと薄手のコートを着てスタンバイ。
まさかこんな本格的に変装しちゃうとは。




「キミにもパパラッチはついてるんだよ〜」と言われたけど、まだピンとこない。
だって俺、まだ普通に休み取れてる俳優だし?
たまたま前回出たドラマの視聴率が良かっただけで知名度は上がったけども。
あくまで脇役ですから。




「これから忙しくなるって。誰が写真集撮ったと思ってんの?」




「あ……レイさんです」




「キミの魅力を最大限に引き出せたんだからそのうち増刷してくよ」




まぁ……売れ行きは好調らしいです。
マネージャーも喜んでくれてる。
スケジュールも埋まってきてる。
発売前とは明らかに違ってきてるのは正直肌で感じてる、かな。






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