揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「先に帰るけどあまり飲みすぎないようにね」とアシスタントさんたちに言って友達ともその場で別れ、2人で店を出る。
店の真ん前で停められてるワゴンに急いで飛び乗った。
身長が高い方だから中腰で乗り込むのキツイ……
すぐに走り出した車内で笑いが止まらない2人。
「何もここまでする必要なくない?」
「いや、念には念を入れて…だよ」
涙目になりながら腹がよじれるくらい笑い合った。
「千ちゃんありがとね?いや〜事務所居てくれて良かった〜」
「いつでも駆けつけますよ〜」とノリの良い運転手。
丸坊主姿にチューリップハットの割と若めの男性。
「どうも、レイさんの右腕してます千賀です」と運転しながら自己紹介
してくれた。
「すいません、こんな格好してますけど相模原 駿です」
「えっ!?」
バックミラーで思いきり目が合ってるけどめちゃくちゃびっくりしてる。
隣の彼女も吹き出してるし。
「よく変装出来てるでしょ?彼、俳優だから撮られるのはマズイしね」
「あ〜なるほどね。今のところ尾行はされてないと思うよ〜」
腕を軽く引かれ
「千ちゃんは誰より察知能力に長けてるの」と耳元で教えてくれた。
「で、どこに?」
今一番知りたいことだ。
迷わず乗り込んだけどこの車はどこに向かってるのか。
「え、ヒミツ」ってどういうこと!?
あまりこっち見ないで。
女装してるから。
20分ほど走ったところでゆっくり停車する。
「明日また迎えに行くね〜お疲れさま」と千ちゃんさんは彼女に言った。
俺には「シュンシュンもまたね」と言ってきたからズッコケた。