揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
降りるとすぐ入口があって中に入るには暗証番号と指紋認証が必要らしい。
素早くやり終えた彼女は俺の手を取り歩いて行く。
ビル…?みたいな建物。
コンクリート打ちっぱなしのオシャレな造り。
三階建てくらい?
中に入ると………
あっ…!スタジオ…!?
ここ、スタジオなの!?
レイさんの……事務所的な?
間接照明だけをつけて
ロールスクリーンのカーテンが自動で下りていく。
「コート脱いでソファー座ってて」
そう言ってどこかに行ってしまった。
ポツンと1人。
だだっ広い空間にソワソワ落ち着かない。
言われた通り座ってたら彼女も上着を脱いだ状態で何かを持って来た。
隣に座って「こっち向いて」なんて言われたら心臓飛び跳ねる。
だって彼女はもうすでに体がこっちに向いてる状態なわけで……このまま押し倒されるのかな?ってバカな期待する俺。
ベットの上で逆に押し倒されたあの撮影の日を思い出す。
チラッと見たら何かを持ってスタンバイしてくれてて……
あれ?もしかしてメイク落とし?
「ちゃんと綺麗に落とさなきゃね」
コットンで優しく丁寧に拭き取ってくれる。
重ね塗りされたマスカラもみるみる落ちていく。
「うわ…すげぇ」
女子って大変なのな。
レイさんはそんなにメイク濃くはないけど……バチッと目が合う。
この眼力が半端なくて、撮影中は何度も殺られたんだった。
「顔が整ってるから本当メイクしがいある」
「そ、そうかな…」
「私、美容系も昔勉強してたから腕がなるわ〜」
「そうなんだ……資格持ってるとか?」