揺れる被写体〜もっと強く愛して〜




初めての撮影日。




レコーディングスタジオでの撮影、
ライブリハーサル風景、
インタビュー撮影、個人撮影と目白押しだ。




アシスタント数名を引き下げ走り回るレイはテキパキと指示してる。
オーバーサイズなTシャツとかいちいち俺好みだしアップにした髪も色っぽい。
見ないように気をつけるが気付いたら目で追ってしまっている。




なんか、調子狂うな。
この俺が……緊張してるのか?
何度か目が合ってそらされる。




スタジオに入るとセットで黒い空間が用意されていて黒革張りソファーの周りに色とりどりのジュエリーに見立てた模倣宝石が散らばっていた。




まずはメンバー4人で座って撮影。
それぞれにポージングしカメラ目線。
レイが自ら顔や足、指先までも角度を決めて修正してくるのは驚いた。




座ったまま足を持たれて上目遣いされてみろ。
片足を立たせ
「こんな感じで目線は下げ気味で」
なんて真っすぐ見つめられたらまんまと落ちる。
デレデレとしたメンバーに苛つく俺。




隣のメンバーは膝の上で肘を付き指を組むポージング。
小道具でメタルっぽい指輪を着けさせレイの手で包み込むように組ませた。
おい、触れ過ぎだろ。
調子に乗るから、コイツ。




で、俺の前に来たレイは………




背もたれに片手を置き、膝の上にくるぶしがくるよう広く足を組む。
レイの手が触れた箇所がバカみたいに熱くなる。
少し目をそらして俯いたら細い指が俺の顎を持ち上げた。




バチッと目が合って
「ボーカルが下向いたらダメですよ?ケンカ売るくらい強気じゃないと」って微笑む。
何だよ、直視出来ねぇ。




最後の一人には肘掛け部分に背を向け座らせた。
ポケットに手を入れさせ、スタイリストでもないのに前髪の流れを決めている。








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