揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



というより、こんな経験……初めてなんだけど。
気分を乗せながら上手く指示されながら撮るのが普通なんだと思ってて。
でも最初から違った。




カメラマン自身が問いかけてきたり触れるか触れないかの距離で居たりする。
撮りながら会話で笑ってくれたり用意された物を合間で一緒に食べたり、まるで……レイさんが恋人のような錯覚に陥る。




心地良い空間を生み出しリラックスさせられたかと思いきや、カメラを下ろした時に見せる微笑みや妖艶な眼差しにドキドキさせられる。




スタジオ入る前にプールでのシーン撮り。
いよいよ腹筋を見せる時が来た。
見てろよ〜びっくりさせてやる。
ガウンを脱いで入水する。
軽く泳いでるところをプールサイドで追いかけながら撮ってる。




サイドに腰掛けて足だけ水につかるシーンでもすぐ隣でカメラを向けて会話を弾ませてくれる。
プロフィールでも見てくれたのかな?
映画好きって知ってくれてる。
その話も時々ぶっ込んでくれて助かる。




最新映画何が観たい?と聞かれ迷わず明後日公開のゾンビ映画を挙げたら「じゃあ一緒に観よう」と自然に言ってきたりする。
仕事上とはわかってても一瞬間が出来てしまった。




カメラを向けたまま言うのは狡い。
どんな顔で……どんな瞳で言ってくれたのかわからないじゃないか。
例え社交辞令だとしてもこの胸の高鳴りはすぐに収まりそうにない。




「本当に…?」




不安たっぷりに聞く表情もずっと撮られてる。
「え、嘘だよー」って、何だよ。
マジかー!てオーバーリアクションしたら背中押されてまたプールに落っこちた。











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