揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



たった1日しかない強行突破な撮影日。
まだ歌詞を乗っけてないメロディーのみをスタジオに流してた。




「まさか撮られる日が来るとは…」と最初から最後までブツブツ文句を言ってたレイだけど。
衣装に着替えたら、そりゃあもう女神そのもので……スタッフ皆が見惚れてしまうほど。




やっぱりこっち側が似合うんじゃない?
たまには撮られてみろって。
入念にカメリハもしたし、立ち位置も確認した。
いつも以上に緊張していたレイも、いざ本番になると……




堂々たる演技で撮ってる側も息を呑む。
「被写体としてすべきことは誰より分かってる」と言ってたな。
まさにその通りでほぼ一発撮りで終了することが出来た。




「カット!OKでーす!」




ホッと一息つくのも束の間。
俺にはまだやるべきことがある。
カットがかかって緊張の糸が切れた瞬間。
まだベットに座ったままのレイにカメラを向ける。




「最後の一枚、良い顔ちょうだい」




分かってる、そんなこと言ったって応じてくれないことは。
撮られるのは半端なく嫌いだもんな。
ちょっとド派手にいきますか。




「……ヤダ」




「あぁ!ちょっとまだ動かないで……一枚だけ!お願い!」




そーっと後ろに下がる。
カメラ構えたままだから足元なんか見えなくて……
「うわっ…!」と言って用意してたゴミ箱にお尻から倒れてハマっちゃう、という。




ゴミ箱に綺麗にハマった俺を見て、プッと吹き出し「アハハハ…!」と自然に笑った顔、戴きました!
「もう〜優吾ドジ過ぎ」って笑いながら手を貸してくれる。




こんな無邪気に笑うレイ……
貴重過ぎてヤバい。
ちゃんと教えてもらった通り撮れたから手ブレしてなくて良かった。
最高の一枚だよ。





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