揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「ま、待って…!本当に……無理なの?」




「私……キスが下手な人に抱かれたくないんで」




「なっ……!」




うわ、可哀想………
男に同情しなくもないけど、
本物の冷血ぶりだな。
煙草をふかしていると曲がって来て姿を現したヘアメイクの美麗ちゃん。




あ……ってな瞳。
冷たいのに、どこか色っぽい視線。
揺れる髪をかきあげた。
若干20歳でこの美貌だったら、そりゃモテるわな。
クールってのに惹かれちゃう男の心理もわからんではないけども。




すれ違う瞬間。
別に知らないふりすりゃいいだけなのに、どっちかと言えばこういうのに関わらないタイプな俺なのに。
気付いたら口が滑ってた。




「何とも思ってないのにキスしちゃダメだよ〜勿体無い」




ピタッと立ち止まって視線が俺を捕らえる。
くわえてた煙草を下に降ろす。
10個も下の女にシビれたのは初めてだった。
瞳だけで……危うく落とされかけた瞬間だったかも。




首に手をかけクスッと笑った気がした。




「仕方ないじゃないですか……モテ期みたいなんで」




「へ……!?」




モテ期……?すげぇ理由だな。
若いって……素晴らしい。
そう思ったら急に笑けてきた。
声に出して笑ったらスッと顔が近付いてきてびっくり。




「へぇ〜そんな顔して笑うんですね…」




「え…?」




細い指が俺の頬に触れて格好悪いけど固まってしまった。




「ここの……笑いシワ。好きだな…」




ヤベ……
ドクン…!と鳴った心臓が誤魔化せないほど波打ってる。
あれ?この子本当はモテ期じゃなくて元からモテる子なんじゃないの?
こうやって色んな男落としてきたのかなって。




「……灰、落ちますよ?」




「え?あ、わぁ…」




慌てて携帯灰皿に捨てる。
またクスッと笑われて行ってしまった。




な、何なんだ……あの色気。
本当に20歳か!?
真面目にカメラしかイジってこなかったオッサンからすれば理解不能なんだが?




しかし、
この胸の高鳴り…どう説明しようか……







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