揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「え、違うけど?どうしたらそう結びつくわけ?」
だよな………
きれいさっぱり終わったんだよな、キミの中で。
「ごめん……たまに泣きそうな目で見てた気がしたから」
「どうしたら越えれんのかってことだけは常に思ってるよ?上川さん自身はさておき、あの人の生み出す作品には本気で惚れてるけどね…」
「そ、そうなんだ…」
「話逸れたけど今は誰とも付き合う気はないから、ごめんね?」
「あ……うん」
また鉢合わせしちゃいけないと慌てて身を隠した。
バカだよな……本当呆れる。
まだ好きだって心のどこかでそう言われるのを期待してた……
あの時の気持ちは薄れてほしくはないし、遊びだったと言われたくない。
なんて、都合の良いことばっか考えてしまう俺は最低だ。
日に日に大きくなる嫁のお腹を見ながら……俺は………
そんなある日の早朝。
バンッ!と勢いよくスタジオに入って来た彼女。
勿論、早朝とあって俺一人しか居ない状況で…こんなことは初めてだった。
「おはよ、どうした?」
「撮れたの、見て…!」
嬉しそうにパソコンに繋いで見せてくれる。
こんなふうに笑顔向けてくれたのが本当久しぶり過ぎて胸の奥がギュッとなった。
椅子を用意してくれて座るよう促される。
平然を装い隣に腰を下ろした。
パソコンに映ったのは野良猫の写真。
「お、可愛い…」
ミケ猫の写真がいくつかあって、その中の一枚。
「え……っ!?」と見た瞬間言葉を失った。
それはよくある猫が何かに向かって高い場所から飛んだ瞬間の写真。
でもそれは横からではなく下から撮ったアングル。
お腹の部分が映っていて初めてこんなアングルで猫を見た。