揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
素早くメイク直しをし、着替えを済ませ、キリッとカメラマンの顔になったレイはやっぱり格好良い。
廊下で待っていてくれた楓ちゃんと一緒に小走りでスタジオに向かう。
「レイさん〜刺激強すぎですぅ〜」と小声で言われてる。
アハハ…!と笑いながら真っ赤な楓ちゃんの肩を抱いて謝っていた。
ちょっぴり大胆で……且つ冷静で……
色気を振りかざし……誰もがそこに溺れてく。
そんな美貌を持ち合わせながら、
カメラを武器に憑依する。
あの瞳が……あの声が………
一瞬で心を支配する
惹きつけて離さない………
被写体になったら……最後。
どんなにあがいてもその魅力に
取り憑かれる。
どこかの記事にそんなことが書かれていたのを見たことがある。
その通りだと思う。
僕も今まさに取り憑かれた一人だ。
こうして会いに来てしまうほど。
心から欲しいと願ってしまう。
こんなに自分が独占欲の塊だったなんて知らなかった。
どんどん子供になる。
焦ってしまう。
歳なんて関係ないって思ってるけど、余裕を見せつけられると思い知る。
僕は、レイを手に入れたい………
俯く僕に差し伸べられた手。
顔を上げると優しく微笑むレイの姿。
え……行ったはずじゃ……?
「おいで」と手を引く。
連れて行かれたのはスタジオではなく……レイの楽屋?らしき部屋。
電気をつけて入った。
「今日はスタジオに入れないから良かったらここ使って?顔バレするし外には行けないでしょ?あ、マネージャーさんにもちゃんとここに居るって言っときなよ?お昼には戻るね?」
あ………行ってしまう…!
背中を向けたレイをそのまま抱きしめた。