揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



レイの手が僕の顔を向けさせる。




「ごめんね、私が呼んだの」




「え…?なんで……」




乱れたシャツを直してくれてジャケットも拾うレイが今何を考えているのか検討もつかない。




「はい、今開けます…!」




行かせたくなくて手を掴んだ。
なんで…?って想いをぶつける。




「キミが道を踏み外さない為なんだよ」




小さな声でそう言って僕の手を解いた。
マネージャーを中に招き入れて何事もなかったかのように振る舞う。




何だよ、それ………




踏み外すって何?
間違った道なの?
そこに、レイの気持ちはないの?
僕だけが勘違いしてるとでも?




ジャケットを手に取り部屋を飛び出した。
慌ててマネージャーが追いかけて来たけど、レイは来なかった。
それが答えなの……?




そうやっていつも子供扱いするけど僕だって男だよ!
中途半端な想いで告白したんじゃない!




本当は……
全て失ってもいいって思えたんだよ……
初めてそう思えた人だったのに……
あんまりだよ……




どのくらい経ったのだろうか。
明かりもつけない真っ暗な部屋で鼻をすする。
胸が苦しくて……張り裂けそうで……
どんなに泣いても涙は枯れない。




マネージャーが置いてく食事も水も手付かずで完全に塞ぎ込んでしまった。
今が何時なのか……昼なのか……夜なのか……




「頼むから一人にして……」




そう言ったのもどれくらい前なのか……
分からない。







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