揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
チャイムが鳴り響いて重い体を引きずり、手付かずの食事を表に出す。
「次からルームサービス要らないです…」
ドア越しでホテルマンにそう告げる。
顔がバレないよう俯いて閉めようとした瞬間。
手で閉まるドアを止められた。
いつものホテルマンじゃなく……
その手は細くて見覚えのあるネイル。
ゆっくり開いた先に見えたのは……
深く帽子をかぶりサングラスをかけた女性。
艷やかな唇だけで全部分かってしまう。
しなやかな指が僕の頬に触れて……
ヤバい……また泣きそう……
「ったく……ひどい顔」
手付かずの食事を見て小さなため息。
どうせまた子供扱いするんだ。
食べなきゃダメでしょって。
「お邪魔するね」と中に入って来た。
久しぶりに明かりのついた部屋。
最上階のスウィートルームなのにこのザマだよ……
服も脱ぎっぱなしだし。
荷物を置いたら冷蔵庫からお水のボトルを取り出した。
「座って」と突っ立ったままの僕に言う。
首を振って従わない。
そしたら手を引っ張り強引に座らされた。
グラスにお水を注いで口に含む。
え……何してるの?
訳が分からないで居る僕の上に乗り唇を塞いできた。
抵抗なんて出来なくて、
口の中にスーッと広がる。
レイの口から流れるお水が喉を通っていく。
何度かそれを繰り返して……
久しぶりに喉が潤った気がした。
「無精ひげ……」
顎を触られポツリと呟く。
ごめん……何もしてなくて。
前髪を分けられ額にキスされた。
「どうして…?どうしてこんなことするの…?これじゃ忘れるどころかまた期待しちゃうよ……」