揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



翌朝、目が覚めるとレイの姿は消えていた。
どこを探しても居なかった。




代わりにマネージャーが居て、荷物をまとめてくれている。
急に襲いかかった悲しい現実に打ちひしがれたまま立ち尽くす。
枕元に一枚のメモが見つかった。




(一番に応援してるよ 
這い上がった後は登りつめてね!
その時はまた撮りに行くよ 
日本でジヒョンをこよなく愛するカメラマンより)




ハハハ……
これがレイのサヨナラ…?




「昨日、レイさんをここに向かわせたのは俺だ…」




「え…?」




「あまりにも見てられなくて…レイさんに頼んだ。事情を説明したら飛んでってくれたよ……お前が本気なのも見て分かってたし」




マネージャーの声が胸にストンと落ちていく。
分かってる……分かってるよ……
僕だって…自分の立場くらい。




飛んで来てくれたんだ……レイ。
突き放したくせに僕が心配だった…?
僕が消えないようにそばに居てくれたの…?
這い上がれって言ってくれた……
それは今のこと…?




温かい涙が伝って落ちる。
嗚咽混じりにしゃがみ込む。




「ジヒョン……大丈夫か?」




ねぇ、レイ………
本当に僕を愛してくれた…?
愛し合えたんだよね…?
昨日のレイに嘘なんてないよね…?




クソっ………!
まだ残ってるよ………
レイを抱いた感触………
この腕に残ってる………
唇も………
瞼を閉じれば鮮明に蘇るよ………




僕は………どうしたらいいの?




最後にくれたメモを胸に当てて声をあげて泣いた。




こんなことで落ちぶれるなと言った。
抱きしめて這い上がってきて…とも言ってくれた。




今は……今だけは………辛すぎる言葉だけど、僕は絶対に忘れない。
きっと、いや絶対…!
這い上がった先の未来にレイは居ると信じて……




今はレイの居ない世界でトップを目指そうと思う。
トップに立たなきゃ会ってくれない気がしてる。
きっとレイならそう言うに決まってる。





必ず登りつめるから………




迎えに行くから………




その時はちゃんと僕を選んでください………













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