想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
「だからもし、わたしが圭介さんにとっての触媒みたいな存在になれたら…」

「触媒?」

「はい。クッキーをふくらませる酵母みたいな。それ自体はちいさな存在だけど、わたしが圭介さんのそばにいることで、アイディアがもっとふくらんだりインスピレーションがわいたりしたら———わたしにとってそれがいちばんの幸せです。それ以上に望むことはないんだって、ようやく気がついたんです。
それで、いてもたってもいられなくなって…」

こうして押しかけてきてしまった。

「それを伝えるためにここに来てくれたのは、心から嬉しい」

ああそうだ。佐倉さんはこうして、わたしのことをしっかり受け止めてくれる。
彼の言葉はいつも誠実でまっすぐだ。自分を飾ったり守ろうと並べているものじゃないから。心に響くんだ。

「でも、本当にいいのか?」せめぎあう想いに、彼の声も揺らいでいる。
「留学や直斗のことは———」

「わたしにとっていちばんの学びは、海外に行くことじゃなくて、デザイナー佐倉圭介のそばにいることです」

仕事をしながら最高の先生について勉強しているって、どれだけ恵まれてるんだろう。
< 142 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop