想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
「いつまでも美織にそう言ってもらえるようにしないとな」
佐倉さんがつぶやく。

「愛するひとが美織でよかった」

その手でわたしを引き寄せて、逃げない投げないひとのせいにしない、という言葉でわたしをここまで導いてくれたひと。
愛し愛されることの幸せを教えてくれたひと。
もう二度と離れたくない。

いただきますとつぶやいて、彼がクッキーを手にとってひと口かじる。
「うん、うまい」と笑顔をみせる。
「幸せをかみしめる、ってこういうことだな」

「わたしひとりで勝手に悩んで、距離をおいて、またこうして押しかけて…振り回すようなことばかりしてしまって、本当にごめんなさい」
振り返ると、自分でもなにをやっているんだろうと思う。

「美織の人生は、俺のものでも直斗のものでもない、美織自身のものだ。自分の人生に責任をとれるのは自分だけだし、悩んで迷うのは当然だ。
その結果、俺のそばにいることを選んでくれたなら、これ以上に嬉しいことはない」

佐倉さんの言葉のひとつひとつが、静かにやさしく心に落ちてゆく。
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