想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
*   *   *


「かなわないなぁ、ほんと」
そうつぶやいて、直斗さんは視線をふっと遠くへむける。

一月の屋上にふたり。寒気がぴりっと肌を刺すけれど、日差しは意外なほどまぶしくて。

目を細めた直斗さんの表情はさっぱりとしていて、彼の背にはやわらかな青空が広がっている。

「栗原さんが佐倉さんのマンションに戻った時点で、答えは分かってたけど。それでも悔しくないといったら、嘘になる」

「なんでそんなことまで知ってるんですか」

「いや佐倉さんのランチのおにぎりとかサンドイッチ、一緒に暮らしてるときは栗原さんが作ってるでしょ」
なんでもないように返される。
「だから、一度佐倉さんから離れたことも分かった」

「揺れました」正直に認める。

「それだけで十分。あの佐倉圭介と互角に勝負したんだから」

彼の中ではすでに完結しているみたいだ。
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