想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
水面下の努力などつゆほども見せず、軽やかに舞う美しき白鳥(スワン)
いま大きく羽ばたこうとしている。

どちらともなく、佐倉さんとデッキに出た。直斗さんが乗る機体はどれだろうと飛行場を眺める。

四月ともなるともう春の陽気で、薄手のコートをはおってきたけど、その必要もないくらいだ。

「天気がいい日でよかったですね」
旅立ちには、やっぱり晴れがふさわしい。

「そうだな、今年の桜も見れただろうし」

出会いと別れを繰り返してゆく人生。そのなかでただひとつ、確かだと感じていること。
わたしはいつも彼の隣に———

「美織」と名を呼ばれて振りむくと、手をとられた。

渡したいものがあるんだ、と彼のコートのポケットに導かれる。

小さなものが指先に触れる。なぞるとベルベットの感触と箱の形。
「開けてみて」

うながされて、震える指で箱をあける。貴石とリングが春の陽にきらめきを放つ。

「ふたりのデザインを形にするのに時間がかかってしまった。ジュエリーデザインもなかなか難しいな」

佐倉さんがわたしの左手をつつみ、薬指にはめてくれる。
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