想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
言われてみれば、白木のカウンターは日本料理屋を思わせるものだった。
石張りの床も “和” を思わせる。そのきっぱりとした雰囲気と、グラスや洋酒が並べられた棚、レコードから流れるヴァイオリンの音色が、不思議と調和している。

「まだ駆け出しの頃、僕がデザインを手がけたんだ。限られた予算で、クラシックの似合うバーにというクライアントの要望に応えようと、何度も必死で図面を引いたな」

佐倉さんが空間デザインを手がけたお店だったのか。

いいなあ。
最初に胸をよぎったのは、みっともない嫉妬だった。
才能があって、チャンスをつかみ、活躍しているひとへの嫉妬。

すぐにばかばかしいと打ち消した。佐倉さんに嫉妬するなんて、相手は雲の上のひとなのに。
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