想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
「———見過せなかったんだ」

泣いている女性をほうっておけなかったということか。
優しさがありがたい反面、同情されている自分が、やっぱりみじめになる。

「俺に降ってきたチャンスを」

思いがけない台詞と間近であてられる視線の強さに、目をふせてしまった。
なにを、佐倉さんは、いまなんて…胸の鼓動が騒ぎだす。

「営業部の栗原美織、さん」

名を呼ばれて、反射的に顔を上げる。
彼がわたしの顔と名前を認識していること自体が、まず驚きだった。

「きみのことは、よく覚えてる。新入社員研修のとき、うちの部にも研修に回ってきてたから」

たしか一週間くらいの期間だったし、他にも同期が数人いた。
どうしてわたしを?

「人一倍目を輝かせて、一生懸命質問していた。いつかはインテリアコーディネートをやりたいです、って言ってたよ。バッグからは、付箋だらけのデザイン本がはみ出してた」

その頃の自分の姿を思い出すと、痛ましささえ感じてしまう。
こんな打ちひしがれた夜が来るなんて、想像もつかなかった。
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