想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
ノブに手をかけたところで、「栗原さん」と声をかけられた。
振り返って彼を見上げる。

「僕はこれで終わりにしたくない」
淡々としているけれど、意志を秘めた声だった。

こんなシチュエーションじゃなかったら、胸をときめかせたかもしれない。
でも今は、どんな言葉も虚しかった。

無言で小さく頭を下げて、マンションを後にした。

どうやって自分のマンションに帰りついたのか、憶えていない。

週末はクッションを抱いてソファーに埋もれているうちに、だらだらと日が暮れていった。

ただただ、自分に幻滅していた。
ひとときの快楽の後にやってきたのは、自己嫌悪だけだった。

仕事に行き詰まって、恋人でもない男性に愚痴を垂れ流して、お酒に酔って、あげく慰めに彼の肌の温もりを求めた。
すべて自分がやってしまったこと。言い訳なんかできない。
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