想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
第1章/もしも、あの時
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もしもあの時———そう思うことって誰にでもあると思うけど。
わたし、栗原美織にとって、あの時、は昨夜だ。
もしあの時間に、あのタイミングで、あのエレベーターに乗らなかったら。
思えばその金曜日は、最悪の日だった。
「美織ちゃんのおかげで助かったよー、あのクライアント、女好きだからさ」
リフォームの契約が成立したお祝いにご飯でも行こう、と先輩営業の木田さんに食事に誘われて、連れていかれたのは会社の近くの中華料理店だった。
席に着くや、木田さんは断りもなくタバコを吸い始めて、言われたのがそのセリフだった。
「女好き?」
こわばった声で、聞き返す。
今回のクライアントは、都内に飲食店を展開するオーナーだった。
以前もわたしが務めるデザイン会社、四商デザインテック株式会社に店内のリフォームを依頼したことがあるという話だった。
もしもあの時———そう思うことって誰にでもあると思うけど。
わたし、栗原美織にとって、あの時、は昨夜だ。
もしあの時間に、あのタイミングで、あのエレベーターに乗らなかったら。
思えばその金曜日は、最悪の日だった。
「美織ちゃんのおかげで助かったよー、あのクライアント、女好きだからさ」
リフォームの契約が成立したお祝いにご飯でも行こう、と先輩営業の木田さんに食事に誘われて、連れていかれたのは会社の近くの中華料理店だった。
席に着くや、木田さんは断りもなくタバコを吸い始めて、言われたのがそのセリフだった。
「女好き?」
こわばった声で、聞き返す。
今回のクライアントは、都内に飲食店を展開するオーナーだった。
以前もわたしが務めるデザイン会社、四商デザインテック株式会社に店内のリフォームを依頼したことがあるという話だった。