想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory


その週末の日曜日、佐倉さんの誘いでわたしたちはドライブデートをした。木曜日に食事で、日曜日にデート。間隔の短さは、彼の気持ちのあらわれだと思いたい。

行く先は彼の提案で、小田原にある美術館だ。
建物の設計から展示品までひとつのアート、とは佐倉さんの言だ。行く途中のバイパスから臨む海もお気に入りで、何度も訪れている大切な場所だという。

「———の、」とハンドルを握る佐倉さんが、著名な抽象画家の名を口にする。
「極限まで削ぎおとした色と線で構築されながら、洗練と温もりを感じさせる作品群に、いつも原点を教えられる気がするんだ」

「美術館にはよく行くんですか?」

「なにかをデザインする、生み出すって、アウトプットの作業だから。インプットも必要なんだろうな。大きなプロジェクトがようやく完成したときには、燃え尽きじゃないけど、自分の中のストックを使い切ってしまった感覚になってしまったりするんだ」

「充電しないといけないんですね」

「まさしく」
こちらを流し見てにこりとする。
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