想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
思えば、その一瞬の判断がその夜の運命を大きく変えることになった。

トイレで手を洗っていると、鏡に映る自分と目が合った。

———美織ちゃん可愛いよね、女優の誰それに似てるよね

あごが細くて顔の輪郭はシャープだけれど、瞳はつぶらで大きい。綺麗と可愛いのいいとこ取りと評されたりもするけれど。
青ざめてうつろな目をして、われながらひどい顔だ。こんな顔した女でも食事をしたいんだろうか…

なんだろうな、ああもう…
やり場のない虚しさを抱えたまま、トイレを後にしてエレベーターホールにたたずむ。

思い返せば、子どもの頃から、お人形の家の家具をあれこれ入れ替えたり、絵を描いたりするのが好きだった。
大学は環境・デザイン学科を卒業し、在学中にインテリアコーディネーターの資格を取った。

いつか自分で空間のデザインを手がけてみたい。
建築・インテリアの両面で伝統と実績がある、四商デザインテック株式会社へ就職できたときは、これで夢が叶うんだ、って本気で信じていた。

目の前で開いた扉に、何も考えずに乗り込む。
わずかな振動とともにエレベーターが下降をはじめる。
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