想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
佐倉さんはデスクにひじをついて顔の前で手を組み、じっと視線を動かさない。感情を押し殺した表情は、初めて見るものだ。

佐倉圭介とて無敗ではない。建築でもプロダクトデザインでも、採用されるには予算やクライアントの意向など、さまざまな要因がからみあっている。

それでも今回は特別だった。佐倉さん指名の仕事で不採用になったということは、デザインそのものを否定されたに等しい。彼の胸中を想像することさえ苦しかった。
そんなときでも他のプロジェクトは進行している。佐倉さんは無言で打ち合わせに出かけていった。

「もうエル・コニール社との話はなくなってしまうんでしょうか」
デザイナーとして飛躍のチャンスと、チーム一丸となって力を注いでいたことは、全てゼロになってしまうのか。

「佐倉さん次第ですね。あらためて新しいデザインを提案するか、それとも縁がなかったとしてあきらめるか。他の仕事もおざなりにできないし、そのなかで先の見えない家具のデザインを続けるのか…」
直斗さんも逡巡している口ぶりだ。
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