想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
「すこしネガティブな気分になってたから、救われる」

彼から水を向けてくれたから、自然な流れでその話題を口にすることができた。
「エル・コニール社の件、残念でしたね」

「結果を受け止めるしかない」
テーブルにおいたグラスをゆっくりと回しながら、彼がつぶやく。ワインの香りがふわりと立ち上がる。
「諦めたくはない。ただ今は迷っている」
自分に言い聞かせるような彼の言葉。

「たとえばデザインを改めて提案することって、今までもあったんですか?」

「もっとこういうものが欲しい、と言われて練り直すことはあった。今回はそれでは通用しない」

世界を相手に仕事するということ。求められるレベルの高さにめまいがしそうになる。

「進むか引くか。実をいうと、今までその決断に直面したことがなかったかもしれない。ひたすら勢いで突き進んできたから」
ワインを口にしながら、佐倉さんが胸中を口にする。

「正解があるわけじゃないですものね」

「美織ならどうする?」
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