想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
わたしも空間デザインに関わっているんだ。そんな手応えを感じられた。

クライアントさんが、今回他社よりうちを選んでくれた理由のひとつに、わたしのアイディアも入ってたりして…

なのに———「あのクライアント、女好きだからさ」

小さなうぬぼれは、木っ端微塵に打ち砕かれた。
悪気がまったくない木田さんの言葉に、余計に心をえぐられた。

みんな、木田さんも、あのクライアントも、それにプランナーの林さんもきっとそうだ。

あわよくばなクライアントに、それをちゃっかり利用する木田さんに、まるで気づかずに踊らされるわたし。
張り切ってデザインについて口にしていた自分を思い出すと、みじめで情けなくて消えてしまいたくなった。

木田さんの言い方には「そのくらい、利用してなんぼでしょ」というしたたかさがにじんでいた。

したたか、は漢字で、(したた)か。わたしは、弱い。

傷つくことも許されないんだろうか…
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