切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
定番の話題が飛び出し、苦笑いした。
涼華さんは俺に会う度に、会社を継げと煩く言ってくる。
「こんなカフェとは辛辣だな。元は祖父さんが開いた店なのに」
「お祖父さんは経営に飽きて、道楽で開いただけ。でも、あんたまだ三十よ。そんな世捨て人みたいな生活してたらボケるわよ」
くどくど説教する涼華さんに晴人が同調する。
「そうそう、玲司さんは真田物産を継ぐべきだと思うよ。孫の代で祖父さんから経営のノウハウを学んだのは、玲司さんだけだし。カフェは誰か人を雇えばいいじゃないか」
「お前は横から煩いよ。会社経営なんて興味ない。それに、俺が祖父さんから教えてもらったのはコーヒーの淹れ方だけだ。お前、いい加減諦めろ」
ツンと晴人の頭を小突いたが、こいつはニヤニヤ顔で言う。
「昔、この店には政財界の要人が来ていたよね? その人達の口利きや玲司さんの経営戦略で真田物産は今や世界を代表するような大企業になった。祖父さんも次の社長は玲司さんだって経済界の重鎮に紹介していたそうじゃないか」
晴人の言うように、このカフェは昔、政財界の大物が集まるサロンだった。
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