切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
今も大企業の会長などがふらっとやって来ることがあるのだが、ここで交わされた会話は日本の経済を動かすような話ばかりで、俺も小さい頃から訳もわからずその会話に参加していた。
それで自然と経営のことにも詳しくなり、祖父さんに『お前ならどうする?』と意見を求められることが増えていった。
祖父さんが俺の考え通りに会社の方針を決めていたと知ったのは、大学生の頃。
「誰かの作り話だろ」
惚けたが、涼華さんが突っ込む。
「お祖父さんが真田を継ぐのは玲司だって明言してたわよ」
「空耳じゃあ……!?」
涼華さんをからかったら、ギロッと睨まれた。
「私がババアとでも言いたいの?」
「涼華さん、眉間にシワ寄ってますよ」
フフッと笑って指摘すると、彼女は凄みのある眼光で俺に命じた。
「煩い。斗真に遠慮なんかせず、継ぎなさいよ」
「そうだよ。水嶋も俺も斗真も玲司さん以外の社長は認めないんで」
晴人の発言に頭痛がする。
彼が俺の側にいるのは、俺を説得して真田物産を継がせるため。
別に俺が晴人を雇っている訳ではない。
< 110 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop