切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
8、彼との旅行はドキドキ
「……まだまだ階段がある」
ゼーハー息を吐きながら、私は遥か上方に目を向けた。
「登り始めたばっかりだよ。頑張れ」
玲司さんは階段の数段下にいる私を振り返り、エールを送る。
天気は快晴。五月の初めなのに気温は二十五度を超えていて、額に汗がにじむ。
私と玲司さんはゴールデンウィークの休みに東北にある山寺に来ていた。いや、正確には山寺目指して千段以上ありそうな石段を登っている。
時刻は午前九時過ぎ。
ゴールデンウィークとあって周りは家族連れが多く、小学生くらいの子供達が軽快に石段を駆け上がっていく。
子供は元気だなあ。私にもその元気分けて欲しい。
まさか玲司さんと東北までドライブするなんて思わなかった。
ドライブの話なんて私だって忘れていたのにな……。
思い返せば一週間前。
玲司さんが朝食の時にコーヒーを口に運びながら言った。
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