切愛願望～極上御曹司の庇護欲からは逃げられない～

店員が来て、「ホットコーヒーをひとつお願いします」と頼むと、母に冷やかな視線を向けた。
「まだ朝からお酒飲んでるの？」
「お酒を飲むと楽しくて、全て忘れるのよ」
母はそう言い訳するが、身体によくない。
「いつか身体壊すわよ」
強い口調で注意するが、母は馬鹿にしたように笑った。
「八年以上飲んでるのよ。平気よ。ねえ、そんなことより、お母さん、お金がないの。いくらか貸してくれない？矢島に家を追い出されて困ってるの」
猫なで声で頼む母をじっと見据えた。
「働いていないの？」
「働いてるけど、ひとりで生活するって大変でしょう？」
軽い調子で答える母に説教をする。
「それはずっと矢島に依存してたからでしょう？それに、お酒だって朝から飲んでたら、すぐにお金なんてなくなるよ」
「わかってるわよ。今度からちゃんとやるから、今回だけ貸して。お給料だって出たでしょう？」