切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
それから定時まで母のことは考えないようにして仕事をしていた。
定時になると、佐藤先輩が私の肩をポンと叩いて微笑んだ。
「その入力終わったら、帰っていいわよ」
「はい」
彼女の目を見て頷き、入力を続ける。
あと一枚入力すれば終わりだ。
入力し終えると、フーッと息を吐きながらパソコンの電源を落とした。
バッグを手に持ち、佐藤先輩に「お先に失礼します」と挨拶したら、ガシッと渡辺君に腕を掴まれた。
「俺も今終わったとこ。飯食いに行くぞ」
「え? ちょっと待って。私は帰るよ」
立ち止まる私を渡辺君が見下ろす。
「どうせお前何も用事ないだろ?」
なんだろう。この威圧感。
「ないけど……」
小声で答えれば、彼はグイグイ私の腕を引っ張った。
「ほら、行くぞ」
彼は歩幅が広くてついて行くのが大変。
足がもつれて転んじゃいそう。

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