切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「待って。私、行くとは言ってないよ」
声を張り上げて抗議するが、彼は聞く耳を持たない。
「お前が『行く』っていうのを待ってたら定年になる」
そんな皮肉を言う彼に引きづられるように会社のツーブロック先にある居酒屋に連れていかれた。
店の客層は二十代から六十代のサラリーマン。女性もちらほらいて楽しそうにお酒を飲んでいる。
テーブル席に座るが、渡辺君が前に座っていると落ち着かない。
これから面接を受けるような気分になってつい身構えてしまう。
「揚げ出し豆腐にさつま揚げ、大根のサラダ、ホッケの塩焼きに、枝豆、シューマイ、焼き鳥、生ビールってとこかな。松本、何飲む?」
メニューを見ていた彼が顔を上げて私に目を向けた。
辺りをキョロキョロ見回しながら、遠慮がちに「烏龍茶を」と答えたら、拒否された。
「せっかく居酒屋来たんだから、酒飲めよ。少しくらい飲めるだろ。お前も生ビールな」
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