切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
必死の思いで走ると、ノアールの店の外観が視界に映った。
あともう少し。
足がもつれそうだったが、やっとのことでノアールに着いたら、ちょうど玲司さんが外に出していたブラックボードを片付けるところだった。
『玲司さん!』
名前を呼んでその胸に飛び込めば、彼は少しよろけながらも私を抱き留め、目を丸くした。
『え? 美月ちゃん、どうしたの?』
玲司さんに聞かれても、動揺していて答えることは出来なかった。
ギュッと彼にしがみつく。
……怖いよ。
でも、もう大丈夫だ。玲司さんがいる。
しばらく彼はなにも言わずに私を抱き締めてくれていた。
十分くらいそうしていたかもしれない。
あっ、私……玲司さんに抱きついてる。
急に恥ずかしさが込み上げてきて、パッと離れようとしたら、彼は優しい目で私を見た。
『落ち着いた? 靴も履いてないみたいだけど、なにがあったか話せる?』
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