切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
三軒目の店に向かえば、店の前に男女がいて、男性がしゃがみ込む女性を立たせようとしている。
……美月?
走って確認すればやはり彼女だった。
一緒にいる身体ががっしりした若い男性が美月に声をかける。
「おい、しっかり立てよ」
多分、彼が美月の同期なのだろう。
「もう……立てない。……眠い」
道に横になろうとする美月に駆け寄り、その身体を抱き上げる。
「こら、美月。道路で寝るなよ」
優しく注意すれば、彼女はそのトロンとした目で俺を見た。
「玲司さん、ただいま〜」
俺の首に手を回し、美月はギュッと抱きつく。
いろいろお説教したいところなのだが、今はいい。
無邪気な彼女に愛おしさが込み上げてくる。
だが、じっくり浸っている暇はないらしい。
美月が一緒にいた男性の鋭い視線を感じ、そいつに目を向けた。
「あんた誰?」
警戒するように俺を見る男性。
それは俺のセリフだと思ったが、フッと笑って答える。
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