切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
俺の正体には気づいていないだろうが、斗真が自分の会社の常務というのは知っていると思う。
その常務と親しげに話しているのだから、俺の正体がバレるのも時間の問題かもしれないな。
そんなことを考えていたら、斗真が美月をじっと見た。
「彼女……兄さんの何?」
「俺の大事な子」
フッと微笑を浮かべて答えると、彼は微かに眉根を寄せた。
「うちの会社で見かけたことがあるけど」
「だから? 社内恋愛禁止って訳じゃないだろう?」
冷ややかに返す俺に斗真は躊躇いがちに意見する。
「でも、親父はよく思わないんじゃ……」
「余計な心配はしなくていい。社長にも言うなよ。あっ、タクシー来たな」
弟の言葉を遮り、美月をタクシーの後部座席に乗せる。
俺も乗り込んで美月の隣に座ると、斗真に声をかけた。
「じゃあ、またな」
バタンと車のドアが閉まり、タクシーの運転手に行き先を告げる。
「銀座まで」
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