切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
タクシーが発進すると、後ろを振り返った。
斗真と美月の同期が見送っている。
渡辺とかいうあの男。
美月をあっさり俺に渡したが、彼女のことをなんとも思っていないのだろうか?
まあ、恋人じゃなくても男女ふたりで飯を食いに行くことは普通にある。
例え、彼が美月に気があったとしても譲るつもりはないが。
十五分ほどでタクシーは自宅マンションに着いた。
俺に寄りかかっていた美月がうっすらと目を開ける。
「……ん? 玲司……さん?」
「美月、降りるよ」
支払いを済ませて美月と一緒に車を降りると、ふと見上げた空に赤い月が浮かんでいた。
なんだか不気味な感じだな。
「美月歩ける?」
「うん」
半分寝ているが彼女は俺の問いに返事をする。
足元が覚束ない美月の腰に手を回してマンションに入るが、彼女が急に「……気持ち悪い」と言ってしゃがみ込んで、口に手を当てた。
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