切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
すぐにスマホを手に取って電話に出ると、斗真が取り乱した様子で告げた。
「兄さん、親父が倒れた!」
親父に対してはなんの感情もないと思っていた。
だが、実際に聞くとショックで、すぐに言葉が出てこない。
「……親父が倒れた?」
もっと詳しい説明を弟に求めれば、彼は親父が倒れた時の状況を俺に話す。
「朝、リビングで一服してて、秘書が来て出社しようとしたら倒れて……。今、病院に運ばれて、これから手術をするところなんだ」
「手術?」
脳出血か心臓発作か……。
「急性心筋梗塞で、すぐにカテーテル手術をしないと重篤な状態になるらしい。兄さんも病院に来てほしい」
斗真の母のことがチラッと頭をよぎったが、今は気にしている場合じゃない。
「わかった」
静かに返事をして電話を切る。
斗真がすぐにメールで知らせて来た病院にタクシーで駆けつければ、父はまだ手術中だった。
< 207 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop