切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
手術室の側の椅子に斗真の母親が座っていて、俺に気づいて声を荒らげた。
「なんであなたが来るの!」
「母さん、ここは病院だ、静かに。それに、兄さんも父さんの息子だよ」
斗真が母親をいさめるが、母親は構わず俺を睨みつけた。
「私はあなたなんか認めないわよ!」
戸籍上義理の母になる彼女に対して怒りの感情はない。
悪いのは愛人を作った親父。
彼女は親父のせいでとても苦しんだだろう。
親父の愛人だった俺の母親と俺を憎むのは当然だ。
しかも、親父は俺を認知し、母親の死後は俺を養子縁組して形式上真田家に迎え入れた。
俺が義理の母の立場なら、同じように思うに違いない。
「斗真、手術が終わったら教えてくれ。カフェで待ってる」
弟にそう告げて、彼の返事も聞かずに足早にこの場を去る。
病院内にあるカフェに入り、コーヒーを頼むと、スマホを取り出して、晴人にラインを打った。
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