切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「社長」
親父と呼ぶのは抵抗があった。
「ああ。来たか」
親父が俺の方を見た。
「今、どこにいるかわかるか?」
そんな皮肉を言えば、親父はムッとした顔をする。
「フン、私はまだ耄碌していない」
「そんだけ元気なら、すぐに仕事に復帰出来るな」
ニヤリとすれば、親父はしばし黙り込んだ。
だが、数秒後に俺の方を見据えて言った。
「いや。もう体力的にキツイ。社長はお前に譲る。お前の祖父さんもそれを望んでいたしな。それに、斗真では副社長にいいように操られる」
親父の口からそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった。
「……みんな勝手だな」
呆れつつも、死んだ祖父さんの遺言を思い出していた。
真田物産を支えろってことは親父や斗真を支えろってことで……。
親子なんだから仲違いはするなって祖父さんは言いたかったのかもしれない。
「今安心して会社を任せられるのはお前しかいない。頼む」
親父が手を伸ばして、俺の手をギュッと掴む。


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