切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
パンプスを履いていたら、玲司さんが見送りに来た。
「行ってきます!」
玄関のドアを開けようとする私を彼が引き止める。
「美月、また忘れ物」
その声に反応して振り返れば、彼が私の腕を掴んでチュッと口付けた。
「行ってらっしゃい」
私の腕を離すと、悪戯が成功した子供のようにニヤリとする彼。
私って学習能力ないなあ。
昨日もされたのに……。
「行ってきます」
はにかみながらそう言って、玄関を出る。
あ~、顔が熱い。
朝から玲司さんに翻弄されっ放し。
頭の中は彼のことで一杯だ。
会社に着くと、オフィスには誰もいなかった。
パソコンを立ち上げ、オフィスの奥にある給湯室のポットにお湯を入れる。
お湯が沸くのを待っていたら、渡辺君がやって来た。
「松本、おはよう。昨日は無理矢理飲ませて悪かったな。いつも男友達と飲みに行くから、その癖でつい……」
頭をポリポリかきながら謝る彼。
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