切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「私がはっきり断らなかったのがいけないの。次から気をつけるよ」
にこやかに笑ってそう告げると、渡辺君は少し安心したような顔になった。
「昨日、お前を迎えに来た男の人ってさあ、あれ……」
うわっ、玲司さんのこと聞かれてる!
「あの人は大家さんなの! 今朝もお酒のことで注意されちゃった」
玲司さんのことを深く追及されないよう誤魔化す。
「大家さんねえ。でも、あの人うちの会社の……」
顎に手を当て渡辺君が何か言いかけたが、ポットに赤いランプがついて……
「あっ、お湯沸いた。今日はほうじ茶にしよう」
棚から自分のカップとティーパックを取り出し、お湯を注ぐ。
「あっ、ごめん。渡辺君、なに言おうとしたの?」
聞き返したら、彼は小さく首を左右に振った。
「……いや、なんでもない。今度、お詫びに晩飯奢る。酒はなしでな」
「律儀だなあ。気にしないで」
クスッと笑って自席に戻る。

< 222 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop