切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「そう言ってくれると嬉しいよ。今日も仕事終わったら俺と晴人に連絡して」
「うん。でも、玲司さんも無理しないで。お父さんの仕事引き継ぐの大変でしょう?」
「まあ、ひとりで全部背負う訳じゃないから平気。あっ、美月、もう八時二十分だよ」
「もう? きゃあ〜、行ってきます。あっ、片付け!きゃっ!」
立とうとしたら椅子に躓き、転びそうになる。
「危ないな。片付けは俺がやるよ」
「ありがとう!」
バッグを持って小走りに玄関へ向えば、また玲司さんが見送りに来た。
「焦って転ばないように」
小さい頃は、母もそんな優しい言葉をかけて私を送り出してくれたな。
もう優しかった母に戻れないんだろうか?
私はどうすればいい?
急に不安に襲われ動かなくなる私に玲司さんが声をかける。
「美月? どうした?」
もう母に会ってもお金を渡してはいけない。
心を強く持たなくては。
「玲司さん、ギュッとして欲しい」
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