切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
私に勇気を下さい。
彼の方を向いて躊躇いながらそう口にすれば、「美月がそんなこと言うの珍しいな」と優しく笑って、私を包み込むように抱き締めた。
フワッと漂う甘いベルガモットの香り。
玲司さんの匂いだ。
温かくて、逞しくて、ホッとする。
自分から彼の胸に手をついて、その顔を見上げた。
「行ってきます」
明るく笑えば、玲司さんが身を屈めてキスをする。
いつもはほんの一瞬で終わるはずなのに、今日は違った。
なんて表現していいのかわからないけど、とても優しい口付けで、心がポカポカする。
「行ってらっしゃい」
彼が私から離れると、なんだか少し寂しくなった。
今生の別れじゃないんだから。
心の中で自分に突っ込みを入れ、彼に手を振ると、玄関を出て会社に向かう。
早足で歩いたせいか、二十分もかからずにオフィスに着いた。
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